morimori review

主に映画や本のレビューを夫婦(もりおともりこ)でしています。

お茶漬けの味

誰が何と言おうとも小津安二郎が好きです。

映画の面白さは、人それぞれあると思いますけど、
僕は「間」とか「空気感」が合うか合わないかです。
まあ、結構難しいんですけどね。トレイラーで分かるもんでもないし。
小津作品はその「間」が素晴らしい。日本映画っていいなって思います。
多数の人によってはつまらないんでしょうけど、僕は大好き。

筋書きはかなりありきたりなんですが、場面場面がいいんですよね。
パチンコとか競輪とか、トンカツ屋のロゴとか(笑)
あとは役者の芝居でしょうか。にじみ出る感じがいいです。

小津で最初に観るならこれですね。
面白く感じられるか自信が無い人は、ながら観でもいいと思います(笑)
ぐっと引っかかれば、とっても面白いですから。

お茶漬の味 [DVD]

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クレヨンしんちゃん オトナ帝国の逆襲

アニメの映画なんていつ以来だろ。おすすめされたので観てみた。
ウルっときたのはひろしの少年時代の回想。

のび太のおばあちゃんもそうだけど、昔の思い出って泣けますよね。
で、泣けるのは思い出であって、状況そのものではないというのが
おそらくこの映画の肝なんでしょうね。上手いですよね。

昭和歌謡の良いのが常時流れるので、BGMも保証します。
ベッツィ&クリスが聴けるアニメなんてそうないでしょ(笑)
ただラストシーンでも昭和歌謡だったのはなんでだろ。
あそこは今の歌で良いかなと思ったんですけどね。

しかしクレヨンしんちゃんはいいですね~。
改めてよさを再確認しました。

天国と地獄

前半はよくある昔の映画。後半になるにつれ、
引き込まれるように見入りました。
黒澤映画はこれと羅生門しか観ていないのですが、面白いですね。

ぐだぐだの犯人が最後に自戒するシーンは圧巻です。
山崎努は、昔のドラマの世紀末の詩で見て好きだったんですけど、
若いころも素敵ですね。これがデビュー作。
それでも当時25歳ということですから、昔が遅いのか、今が早過ぎるのか。

しかし運転手は、貸してくださいくらい言ってほしかった。
それくらいの気概がほしかった(笑)。いくら手の届かない金額とはいえ。
奥さんの演技も立派です。差し押さえの時、自らは受け入れたものの、
旦那の気持ちを察して憔悴してしまう。
泣き崩れちゃ台無しだったんで、あそこはよかったです。

今の映画なら多分、権藤は家売りはしなくてすむかもしれません。
むしろ会社のほうも全て解決して大団円になるかもしれません。
それもそれで一つのシナリオですが、私はこの作品の筋のほうが好きです。

まあ、なんにせよ名作ですからね。一回観てほしい作品です。

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山椒魚/井伏鱒二

先日紹介した志賀直哉をコミカルと表現するのなら
こちらは哀しいトーンですね。
あからさまに陰惨なシーンはないのですが、空気がとてもうら寂しい。

山椒魚も、材料によってはいくらでもコミカルに
明るくなりそうなもんですが、井伏は徹底して哀しく書いています。
個人的には明るいメランコリックの頂点は太宰治なんですが
彼が井伏に師事したというのも少し面白いですね。

ちなみに名著「日本語の作文技術」にて、”山椒魚は悲しんだ”
の部分からすぐに改行しているのを、本では言及していて、
なるほどと思いました。

そういうどうでもいいところを「行間を読む」ということで
それとなく許されるのが小説のいいところ。違うか。


山椒魚 (新潮文庫)

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マダム・イン・ニューヨーク

前評判で手に取ってみましたが、初めは特に期待せずレンタルした映画でした。
インドムービーってあまり見たことがありませんでしたが、よく踊る、とにかく踊ると聞いていたので、一応身構えてはいたものの、本作は(おそらく)そこまでインドインドしたところはなかったかな。
こちらのレビューを書く気になったのは、ひとえに主人公の最後のスピーチが決め手でした。

自分自身に自信を失ったとき、何をすればその自信を取り戻せるのか。
映画の流れの中でそうしたことが非常にわかりやすく表現されていき、満を持してのこのスピーチには、じんとした感動が胸に湧きました。
あれこれ詰め込まず、一つのテーマに絞られている=映画の筋が明快でわかりやすいところが、この映画の良さを引き出しているんだろうな。
また、マダムがとても美人なのですが、ただ写真的に美人なだけでなく、その表情やしぐさがとても魅力的。
何かに行き詰っているときに、ふと見たくなる映画です。

小僧の神様/志賀直哉

新潮文庫の短編集。
志賀直哉はもう少し読まれてもいい気がする作者。特に短編。

国語の教科書では「城の崎にて」が有名でしょうか。
あれも面白いんですけど、学生で面白さがわかれば凄いと思います。
どちらかといえば小僧の神様を収録してほしいですな。
こっちのほうがよりポップで良い。

あと個人的には「好人物の夫婦」が好きです。
フェミニンな人はどうかな、と思いますが、
私はコミカルで素敵だと思いました。

短い作品ばかりなんで、古い文学難しそうと
思ってる人にぜひ勧めたいです。
(まあでも、人に勧められるものって大抵熱が入らないんですけどね)
この新潮文庫は城の崎にても入っているのでよりおすすめです。

小僧の神様・城の崎にて (新潮文庫)

小僧の神様・城の崎にて (新潮文庫)

ラブ・アクチュアリー

万人が見て楽しいと思える映画の最たるもの。
オムニバスでこういのされちゃ、もう面白い映画としかいいようがない。
すべての人物を無理やり関連付けるのはイギリス映画っぽいですね。
なんとなく。

イギリスの超有名どころの俳優がいかんなく起用されているので
これを見て気になった人のほかの作品を見るのもあり。
実際、これでコリンファースにはまった私。

最後がビーチボーイズなのも素敵ですね。
ビートルズの葬儀と逆にしたほうがお国柄としては
よかったのかもしれませんが、
できあがりは絶対今のほうがいいですね。