morimori review

主に映画や本のレビューを夫婦(もりおともりこ)でしています。

山椒魚/井伏鱒二

先日紹介した志賀直哉をコミカルと表現するのなら
こちらは哀しいトーンですね。
あからさまに陰惨なシーンはないのですが、空気がとてもうら寂しい。

山椒魚も、材料によってはいくらでもコミカルに
明るくなりそうなもんですが、井伏は徹底して哀しく書いています。
個人的には明るいメランコリックの頂点は太宰治なんですが
彼が井伏に師事したというのも少し面白いですね。

ちなみに名著「日本語の作文技術」にて、”山椒魚は悲しんだ”
の部分からすぐに改行しているのを、本では言及していて、
なるほどと思いました。

そういうどうでもいいところを「行間を読む」ということで
それとなく許されるのが小説のいいところ。違うか。


山椒魚 (新潮文庫)

山椒魚 (新潮文庫)